2014年(平成26年)11月・晩秋 38号

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今号取材のきっかけを作ってくれた穴井智大さんが、「分校のあった時に来て欲しかった」と言っていたのを思い出して、淮園(わいえん)小学校栗原(くりばる)分校を訪ねてみた。栗原分校の校舎は、本栗原から竹の下へ行く道路の左側の小高い丘の上にぽつんと建っていた。民家と見間違うような瓦葺きの平屋で、背後に杉山があり、すぐ後ろにはモミの大木が立っている。

小学1年生から4年生までの児童が、この校舎で学んでいた。教室は、休校になってから10年も経つのに、天井の飾り付けや棚の置物は当時のままで、いつでも再開しようとする地元の望みが伝わってきた。しかし、今年3月31日をもって閉校が決定したそうだ。校舎前のピンク色の手洗い場や小さな運動場に響く子どもたちの歓声を、栗原の住民たちが日々耳にしていたことを想像すると、この分校の存在が、地域の大きな励みとなっていたことに思い至る。

「リトルヘブン」の取材で訪ねる各地で、小学校の統廃合が話題になることが、最近は特に多いと感じる。地域の子どもたちが通う学校の役割を見ようともせず、経済効率を求めたとしか思えない休校、廃校が相次いでいる。子どもは地域の未来を担う柱と位置付け、地域で守り育てる大切さを、もう一度思い起こして欲しいと願わずにおれない。

淮園小学校栗原分校を後にして作草へ向かっていると、栗原観音堂の入り口に軽自動車が停めてある。境内に上って行くと、麦わら帽子に虫除けの網を被った男性が落ち葉を掃除していた。

「覚えが悪りいわ、息が上がるわ、年取ったもんじゃわ。若けえ時のようにはねえわ。若けえ時には30キロのブロックを抱えよったけんね。網被っとらな、ギンナンに負けてかぶれるき。それん、ここん軒先にアカバチが巣を掛けちょっじゃろ、これん刺さるっと、どうしようもならんわい」

本栗原の平山伝さん(76)が、黙々と境内の掃除をしていた。本栗原、竹の下、作草の各集落に一人ずつ観音様の役員が決まっているそうだ。参道の階段下まできれいに掃いて、掃除を終えた伝さん。「人間、それぞれに思いがあるけんね。勝手にはでけんけんね」。何かやり残したことがあるのだろうか。

地域の誰に対しても気配りを忘れない。その中で、自分の役割を黙々と果たしていく生き方、暮らしぶりは、この地域に受け継がれてきた「徳」というものなのだ。

栗原観音堂の内部

栗原観音堂境内の掃除をしていた平山伝さん。「ギンナンに負けてかぶれるき」と、
網を被る

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